相部屋での老後  
     
     特養ホームにしても老健にしても、ほとんど相部屋です。個室ではありません。最近の新設の特養は個室型になりつつありますが、まだ相部屋が中心です。老健は、病院の延長で、これは相部屋です。

 しかし、人としての自由な時間・空間が持てるのは、これは無条件に個室だけです。
 とくに介護では大切です。
 相部屋がよくない理由は、だれかが風邪を引けば、すぐに体力の弱った同室の人にうつるからです。たとえば、毎年冬になると、同じ特別養護老人ホームで5人、6人という方がインフルエンザで同時にお亡くなりになります。やはり、そうした特別養護老人ホームは4人部屋です。お年寄りは伝染病に弱いので、個室介護ほど優れるものはありません。

 また、4人部屋とか8人部屋で生活していると、自然と、他人に迷惑をかけないことがもっとも重要な日常生活のルールとなります。ラジオはイヤホンで聴いて音を出さないとか、できるだけ部屋の中を歩きまわらないようにすることなどです。歩きまわって同居人の目障りにならないように気配りをするのです。
 このため、相部屋ではベッドに寝たきりの生活になりかねません。筋肉は使わなければ日に日に衰えます。したがって、身の回りのことが自分でできていた人でも、相部屋で生活をしていると、数カ月で本物の寝たきりになってしまうことがよくあります。

 相部屋は、欧米のホーム・施設では有り得ません。なぜ、日本では相部屋があるのでしょうか。日本では、多人数部屋のことを「相部屋」という言葉で表現しています。相部屋とは、日本の福祉の悪しき専門用語です。事実を正確に伝えるためには、「雑居部屋」とか「タコ部屋」という言葉を使うべきでしょう。

 また、日本では個室で介護するという基本的な発想が欠けていますから、福祉施設の規模を表す単位はベッド数だけです。「50床の特別養護老人ホーム」などという表現に統一されています。つい最近まで、相部屋が当たり前だったからです。欧米では、このような相部屋は有り得ないのです。こういう福祉レベルの格差はどこからできてきたのでしょう。
 やはり、日本が経済大国になったあとでさえも、介護施設というものが救貧対策で建設されてきたという歴史があります。また、日本では老人病院がこれまで介護を担ってきたということも大きな理由です。病院では、6人部屋、8人部屋が当たり前だからです。そのような過去の歴史を引きずって、今に到っているわけです。

 自分自身の「時間」と「空間」。それは、憲法に保証されている基本的人権の一つではないでしょうか。最低限の「空間」は保証されるべきなのです。相部屋の特養や老健で、ご両親の「人生の最後の時間」が守られるのでしょうか。それでは、人生の晩年が豊かなものであるとは決して言えません。
 高額な一時金のいる健康型の有料老人ホームは違いますが、介護が必要になってはいる施設・ホームは、ご本人でなく、ご家族の事情で決められる場合がほとんどです。であるならば、費用との相談もありますが、せめて「個室」をと思われるのも、考え方であると思われます。「終の棲家」が相部屋では、いかにも寂しい感じです。